- 軽貨物回想録 2026.10.06
嫌になる日もある。それでも、届けてよかったと思う瞬間がある。
昔のAmazonのCMに、おばあちゃんと孫がバイクに乗る話がありました。覚えている方、いらっしゃいますか。
孫が、おばあちゃんにヘルメットを贈るんです。そして、それをかぶったおばあちゃんをバイクの後ろに乗せて、一緒に出かけるのですが、そのときのおばあちゃんが、なんとも幸せそうなんですよね。
その場面を思い出すと、配送の仕事をしている立場から、つい考えてしまうことがあります。
あのヘルメットも、誰かが運んだんだよなあ。
今日は、そんな話を少しさせてください。軽貨物の仕事をしているあなたにも、これから配送の仕事を考えているあなたにも、知ってもらえたらと思っています。
ヘルメットが届いた。そのあとに、二人の時間があった
これは2017年のAmazonプライムのCMで、孫が目にした、若い頃のおじいちゃんとおばあちゃんの写真がきっかけになっています。二人がバイクと一緒に写っているその写真から、ヘルメットの贈り物と、孫とおばあちゃんが一緒に出かける時間へつながっていくんです。
あの場面を見ていると、おばあちゃんがうれしかったのは、孫が自分のことを考えて、一緒に出かけてくれたこともあるんだろうな、と思うんです。
そして、孫がヘルメットを選んで注文してから、実際におばあちゃんがかぶれるようになるまでには、商品を用意する人、梱包する人、仕分ける人、運ぶ人の仕事があります。
配送をする人は、いつものように一つの荷物を渡しただけかもしれません。でも、その荷物の先には、あんな時間が待っていた。
そう考えると、あの箱の見え方が少し変わるんですよね。
CMについては、Amazonの当時の公式発表と、写真付きで場面を紹介した記事でも見ることができます。
とはいえ、配送の現場はしんどい日もあります
こんな話をすると、配送って、毎日温かい気持ちになれる仕事なのかなと思われるかもしれませんが、現場にいると、嫌になることも結構あります。
たとえば、土砂降りの中で荷物を運ぶ日。自分はぬれていても、荷物はぬらしたくないですから、晴れた日より気を使いますし、運ぶだけでも大変です。
時間指定に合わせて、重たい水を抱え、階段で4階、5階まで上がったのに、お客さんがいないこともあります。
……いないのかあ。
そうなると、持って上がった水は、また自分で持って下りることになるんです。上がるだけでも大変だったのにと思うと、腕や足だけでなく、気持ちまで重くなります。
それから、今ならカスタマーハラスメントと言われるような、ひどい対応をされることもあります。仕事とはいえ、きつい言葉をぶつけられれば傷つきます。
以前書いた、再配達の電話で容姿をけなされたドライバーの話も、そうでした。荷物を届ける人にも、気持ちがあります。
さらに、荷物を届けるための、車を置く場所にも困ります。近くのコインパーキングを探しても満車だったり、路上に停めて取り締まりを受け、支払いまで自分の負担になったり、という経験もあります。
こうした負担もあるからこそ、安全に車を置ける場所や、無理のない届け方まで考えていきたいんです。
ほかの仕事にも、それぞれ大変なことはあると思います。でも、自分がその場で困っているときに「どの仕事も大変だから」で片づけられても、つらさが軽くなるわけではないですよね。
誰かが喜んでいると分かると、やっぱりうれしい
それでも、自分が届けた荷物で誰かが幸せになっていると実感できたときには、やっぱりうれしいんです。
たとえば、自分が運んだものを楽しみに待っていてくれたり、届けたことで、誰かのやりたかったことがかなったり。そういう喜びがあると分かったときに、ああ、届けられてよかったな、と思えるんです。
自分のやっていることが、誰かのうれしい時間につながっていた。そう感じられることが、私たちにとってもうれしいんでしょうね。
あのCMが心に残るのも、普段なかなか見ることのできない「届けたあと」を見せてくれるからかもしれません。
というのも、ドライバーは荷物を渡したら、次の届け先に向かいますから。箱を開けたあと、一緒に出かけたのか、誰かに電話したのか、そこまでは、たいてい分からないんです。
でも、見えていないところにも、きっと続きがある。そんなふうに考えると、自分が届けた一個にも、誰かがうれしくなる続きがあるかもしれないと思うんですよね。
誕生日に届けたいのは、相手を思っている気持ちでもある
そんな「届けたあとの喜び」につながる話を、私たちオーシャンズの「わがまま便」のサイトでも紹介しています。誕生日の「0時サプライズ」を紹介した記事です。
誕生日が始まる瞬間に、お祝いを届けたい。大切な人を喜ばせたいから、贈るものと一緒に、渡すタイミングまで考えるんです。
贈る人は、品物を選ぶときから、受け取る相手のことを考えているんですよね。何が好きだったかな。これなら喜んでくれるかな。どうやって渡そうかな、と。
そうやって考えた贈り物を相手まで届けるのが、配送の仕事です。品物を受け取るときには、その人が考えたことの続きも引き受けるような気持ちになります。
わがまま便では、買い物やちょっとした用事と配送を組み合わせて相談できます。ですから、依頼の中身を聞いていくうちに、「何を運ぶか」の向こうにある、「誰に、どんなふうに喜んでほしいか」まで見えてくることがあります。
荷物を持つ手には、重さしか伝わってこないかもしれません。でも、頼んだ人にとっては、大切な人の誕生日なんです。
そう思うと、受け取ってから渡すまでの時間も、大事にしたくなります。
水や日用品を届けることも、誰かの安心につながっている
こうした人と人とのつながりは、普段の暮らしの中にもあります。
たとえば、離れて暮らす親の買い物が気になるときです。重い水やお米を運ぶのは大変そうだけれど、自分も仕事があって、すぐには行けない。そんなときにも、配送が役に立てます。
わがまま便では、そんな使い方を実家の親へ、買い物や日用品を代わりに届ける活用例として紹介しています。
さっき、重たい水を階段で運ぶのはしんどい、と書きましたが、その重さを、毎日の買い物で負担に感じている人もいるんですよね。
そこで私たちが届ければ、その人は重いものを持たずに済みますし、離れている家族も、ちゃんと届いたと分かれば安心できます。
同じ一箱の水でも、その先にある暮らしまで考えると、誰の役に立っているのかが見えてきます。
また、企業専属便の仕事にも、お花屋さんから、個人宅や会社、式場へ花を届ける配送があります。
誕生日や記念日の花、新しくお店を開いた人に贈る花などには、選んだ人がいて、きれいに仕上げた人がいて、受け取る人がいます。その人たちの間をつなぐのも、私たちの仕事なんです。
こうして考えると、宅配でも企業への配送でも、届けるものはいろいろありますが、その先に人がいることは変わらないんだと思います。
届ける人の気持ちも、大切にしたい
ここまで届けた先の喜びについて書いてきましたが、届ける側の気持ちについても、ひとつ大事にしておきたいことがあります。
お客さんが喜んでくれるとうれしいのは本当ですし、現場で傷ついたり困ったりすることがあるのも本当です。だから、ひどい言葉を言われてつらかったことや、一人ではどうしたらよいか分からないことも、きちんと話してほしいと思っています。
届ける相手を大切にするのと同じように、届ける人の安全や生活も大切ですから。
困ったときの相談については、「こんなことで電話していいのかな」と思ったことのあるドライバーさんへという記事でもお話ししています。困ったことを抱えたまま走っている方には、そちらも読んでもらえたらと思います。
これから配送の仕事を考えている方も、仕事内容や報酬、時間、負担する費用はちゃんと確かめてください。自分の生活に合う働き方の中で、届ける喜びも感じてもらえたら、うれしいです。
オーシャンズの仕事に興味を持ってくださった方は、募集中の求人も見てみてください。
そして、今日もどこかで荷物を運んでいるあなたへ。
今日届けた荷物の中にも、誰かが選んだ贈り物や、届くのを待っていたものがあるかもしれません。
その人がどんな顔で箱を開けたか、私たちには見えないことのほうが多いです。でも、その荷物がそこにあるのは、誰かが運んだからです。
嫌になる日もありますが、誰かの幸せな時間に、自分の仕事もつながっていると感じられると、やっぱりうれしい。配送には、そんな瞬間もあるんですよね。