- 軽貨物ドライバーをお考えの方へ 2026.08.09
【2026年10月から】インボイス未登録の軽貨物ドライバーに何が起きるか|控除80%が70%へ
2026年10月1日から、インボイス制度の経過措置が変わります。免税事業者(インボイス未登録の事業者)に支払いをしたとき、発注側が控除できる割合が80%から70%に下がります。
これは、軽貨物ドライバーにとって他人事ではありません。あなたがインボイス未登録なら、10月以降、取引先の負担が増えます。そして負担が増えた分について、報酬の話を持ちかけられる可能性があります。
この記事では、東京・江東区で18年軽貨物配送を続けてきた立場から、10月に何が変わるのか、あなたはどう判断すればいいのかを整理します。制度の話は難しく感じますが、押さえるべき点は多くありません。
まず、いまの自分がどちらなのかを確認してください
| 免税事業者(インボイス未登録) | インボイス発行事業者(登録済み) | |
|---|---|---|
| 消費税の納税 | しない | する |
| 登録番号 | 持っていない | T+13桁の番号を持っている |
| 請求書 | 登録番号の記載なし | 登録番号を記載する |
| 10月の影響 | 取引先の負担が増える | 直接の影響なし |
ご自分がどちらか分からない場合は、取引先に出している請求書に「T」で始まる13桁の番号が入っているかを見てください。入っていれば登録済みです。入っていなければ免税事業者の可能性が高いです。
10月1日から、控除割合はこう変わります
インボイス制度では、免税事業者への支払いについても、経過措置として一定割合を控除できる仕組みがあります。この割合が段階的に下がっていきます。
| 期間 | 発注側が控除できる割合 |
|---|---|
| 〜2026年9月30日 | 80% |
| 2026年10月1日〜2028年9月30日 | 70% |
| 2028年10月1日〜2030年9月30日 | 50% |
| 2030年10月1日〜2031年9月30日 | 30% |
| 2031年10月1日〜 | 0%(控除できなくなる) |
重要なのは、これが一度きりの変更ではないという点です。2031年10月には0%になります。つまり、免税事業者のままでいることの負担は、時間とともに増えていきます。
取引先にとって、どれくらいの差なのか
数字で見てください。月額22万円(税込)を免税事業者のドライバーに支払っている会社の例です。
| 9月まで(80%控除) | 10月から(70%控除) | |
|---|---|---|
| 支払額(税込) | 220,000円 | 220,000円 |
| うち消費税相当 | 20,000円 | 20,000円 |
| 会社が控除できる額 | 16,000円 | 14,000円 |
| 会社が負担する額 | 4,000円 | 6,000円 |
※分かりやすさのための単純な計算例です。実際の税額計算は事業者の状況により異なります。
1人あたり月2,000円の増加。これを何十人分も抱える会社にとっては、無視できない金額になります。だから「報酬を見直したい」という話が出てくる可能性があるのです。
あわせて、令和8年度の改正では控除できる限度額も引き下げられました。同一の免税事業者等からの課税仕入れの合計額(税込)が年間1億円を超える部分は、この経過措置が使えません(改正前は10億円)。大手ほど、免税事業者との取引を見直す動機が強まる方向です。
報酬の減額を持ちかけられたら
ここが、いちばん知っておいてほしいところです。
一方的な減額は認められていません。2024年11月に施行されたフリーランス法では、発注側による報酬の一方的な減額や買いたたきが禁止行為として定められています(公正取引委員会)。
また、インボイス制度に関しては、公正取引委員会が「免税事業者であることを理由に、一方的に取引価格を引き下げることは独占禁止法上問題となり得る」という考え方を示しています。
つまり、次のような対応は問題になり得ます。
- 説明も協議もなく、いきなり報酬を下げる
- 「登録しないなら取引をやめる」と一方的に通告する
- 消費税相当額を全額カットする
逆に、会社側が事情を説明し、双方が協議したうえで条件を決めるのは正当な話し合いです。問題なのは減額そのものではなく、一方的であることです。
話を持ちかけられたときの対応
- その場で即答しない。「持ち帰って考えます」で構いません。
- 根拠を聞く。いくら、なぜ、いつからかを書面かメールでもらってください。
- 比較する。登録した場合の納税額と、減額された場合の手取りを計算して比べます。
- 納得できなければ相談する。フリーランス・トラブル110番(無料・匿名可/0120-532-110)が使えます。
では、登録すべきなのか
答えは「あなたの状況による」としか言えません。ただし、判断材料は整理できます。
| 免税事業者のままでいる | インボイス登録する | |
|---|---|---|
| 消費税の納税 | 不要 | 必要になる |
| 確定申告の手間 | 所得税だけ | 消費税の申告も加わる |
| 取引先からの見え方 | 負担が増える相手 | 負担が変わらない相手 |
| 報酬交渉のリスク | 今後さらに高まる | 低い |
| 案件の選択肢 | 狭まる可能性がある | 広い |
ざっくりした判断の目安はこうです。
- 取引先が法人中心で、長く続けたいなら、登録を検討する価値があります。今後さらに控除割合が下がるため、いずれ同じ話が繰り返されます。
- 個人相手の仕事が中心なら、登録の必要性は下がります。消費税の控除を必要としない相手だからです。
- 短期間だけ働く予定なら、免税のままでも大きな問題にならない場合があります。
ただし、登録すれば消費税を納めることになります。いくら納めることになるのかを計算してから決めてください。この計算には有利な特例があり、別の記事で詳しく説明しています。2割特例は今年で終わり、来年から3割特例に変わるという重要な変更もあるので、あわせてお読みください。
よくある質問
いま免税事業者ですが、取引先から何も言われていません。放っておいていいですか?
10月までに何も言われないなら、その取引先は負担を受け入れているということです。ただし2028年10月には50%、2031年10月には0%になります。いずれ話が出る可能性は高いので、今のうちに計算だけしておくことをおすすめします。
登録すると、手取りはどれくらい減りますか?
納める消費税の分だけ減ります。ただし特例を使えば、通常の計算よりかなり少ない金額で済みます。運送業は簡易課税では第五種事業(みなし仕入率50%)にあたりますが、2割特例が使えるならそちらのほうが有利です。ご自身の売上で試算してから判断してください。
登録はいつでもできますか?
登録申請は随時できますが、いつから効力が生じるかには決まりがあります。また、免税事業者が登録すると課税事業者になるため、後から戻すには手続きと期間の制約があります。時期の判断は所轄の税務署にご確認ください。
会社が「登録しないと契約できない」と言ってきました。
登録を求めること自体は、話し合いとしてはあり得ます。ただし一方的に取引を打ち切ると通告するのは問題になり得ます。フリーランス法では、中途解除・不更新について事前の予告と理由の開示が義務づけられています。納得できない場合は相談窓口をご利用ください。
複数の会社と取引していますが、会社ごとに対応は変えられますか?
登録は事業者単位なので、会社ごとに「登録している/していない」を使い分けることはできません。登録すれば、すべての取引で登録事業者になります。取引先全体を見て判断してください。
まとめ:知らないまま10月を迎えないでください
制度の話は面倒ですが、これはあなたの手取りに直接効いてくる変更です。そして、知らないまま減額の話を持ちかけられるのと、制度を理解したうえで話し合うのとでは、結果がまったく変わります。
覚えておいてほしいのは3点だけです。
- 10月1日から控除割合が80%→70%になる。今後さらに下がる
- 一方的な減額は認められていない。協議を求めていい
- 登録するかは、納税額を計算してから決める
株式会社オーシャンズは、東京・江東区で18年、軽貨物配送を続けてきました。当社では、インボイスの取り扱いを面談の時点で必ずご説明します。後から「聞いていなかった」ということがないようにするためです。ご不安があれば、契約前にお尋ねください。
※本記事は2026年8月時点の公表情報にもとづく一般的な説明です。税額の計算や登録の判断は、必ず所轄の税務署または税理士等の専門家にご確認ください。取引上のトラブルはフリーランス・トラブル110番(無料・匿名可)へご相談いただけます。