- 軽貨物ドライバーをお考えの方へ 2026.08.06
経費で落とせるもの、落とせないもの|軽貨物ドライバーの確定申告と節税
軽貨物ドライバーは個人事業主です。会社が年末調整をしてくれるわけではないので、税金を自分で計算して納めます。そしてここが重要なのですが、同じ売上でも経費をきちんと計上できるかどうかで、納める税金は数万円から十数万円変わります。
「面倒だから」「よく分からないから」と適当に済ませている方が、実際にかなりいます。それは、本来払わなくていい税金を払っているということです。この記事では、東京・江東区で18年軽貨物配送を続けてきた立場から、経費の基本と確定申告の要点を整理します。
まず理解すべきこと:税金は「売上」にはかからない
税金がかかるのは、売上ではなく所得です。
| 段階 | 計算 |
|---|---|
| 売上 | 1年間に受け取った報酬の合計 |
| − 経費 | 仕事のために使ったお金 |
| = 事業所得 | ここが申告する金額 |
| − 青色申告特別控除 | 最大65万円 |
| − 各種所得控除 | 基礎控除、社会保険料控除、扶養控除など |
| = 課税所得 | この金額に税率をかける |
つまり、経費を1万円多く計上できれば、課税所得が1万円減ります。所得税・住民税を合わせて15%の税率帯なら、それだけで1,500円の差。年間で数十万円の経費計上漏れがあれば、影響は数万円になります。
経費に落とせるもの
軽貨物の仕事で使ったお金は、基本的に経費になります。よくある項目を挙げます。
| 分類 | 具体例 | 勘定科目の例 |
|---|---|---|
| 車両関係 | ガソリン代、オイル交換、タイヤ、車検、修理、洗車 | 車両費 |
| 車両の取得 | 軽バンの購入費 | 減価償却費 |
| リース | 車両のリース料 | 賃借料 |
| 保険 | 任意保険、自賠責保険 | 保険料 |
| 税金 | 軽自動車税、自動車重量税 | 租税公課 |
| 走行時 | 高速代、コインパーキング代、フェリー代 | 旅費交通費 |
| 駐車場 | 月極駐車場代 | 地代家賃 |
| 通信 | スマホ代、配送アプリの利用料 | 通信費 |
| 備品 | 台車、軍手、カッター、ロープ、毛布、スマホホルダー | 消耗品費 |
| 作業着 | 制服、安全靴、雨具 | 消耗品費 |
| 手数料 | 振込手数料、会計ソフト代、税理士報酬 | 支払手数料など |
| 会社への支払い | ロイヤリティ、システム利用料 | 支払手数料など |
見落とされやすいのはコインパーキング代です。1回数百円でも、都心で毎日使えば年間で相当な額になります。レシートが小さくて失くしやすいので、その場でスマホで撮る習慣をつけてください。
按分(あんぶん)が必要なもの
仕事とプライベートの両方に使うものは、仕事で使った割合だけを経費にします。これを家事按分といいます。
| 項目 | 按分の考え方 |
|---|---|
| スマホ代 | 仕事の使用時間・用途の割合で |
| 車(私用と兼用の場合) | 走行距離の割合で |
| 自宅の家賃・電気代 | 事務作業に使う面積・時間の割合で |
按分の割合は、合理的な根拠を説明できることが大事です。「なんとなく8割」ではなく、「走行距離のうち仕事が8割だから」と言えるようにしておきます。だからこそ、走行距離の記録が効いてきます。
経費にできないもの
- 自分の食事代——配送途中のランチは、原則として経費になりません(打ち合わせを伴う会食などは別)。
- スピード違反・駐車違反の反則金——罰金の類は経費になりません。
- 所得税・住民税——これらは経費ではありません(軽自動車税や重量税は経費になります)。
- 国民健康保険料・国民年金保険料——経費ではありませんが、「社会保険料控除」として全額が所得から引けます。忘れずに申告してください。
- プライベートの支出——当然ですが、仕事に関係ないものは入れられません。
4つ目は勘違いしやすいところです。経費ではないけれど税金は減ります。扱いが違うだけで、申告し忘れると損をします。
青色申告にすると、何が変わるか
| 白色申告 | 青色申告 | |
|---|---|---|
| 特別控除 | なし | 最大65万円 |
| 赤字の繰越 | できない | 翌年以降3年間できる |
| 家族への給与 | 制限あり | 専従者給与として経費にできる |
| 30万円未満の資産 | 減価償却が必要 | 一括で経費にできる特例あり |
| 記帳 | 簡易でよい | 複式簿記が必要(65万円控除の場合) |
| 事前の申請 | 不要 | 必要(期限あり) |
最大65万円の控除を受けるには、複式簿記で記帳し、e-Taxで申告する(または電子帳簿保存を行う)といった条件があります。会計ソフトを使えば複式簿記は自動で作られるので、実務上のハードルは高くありません。
ただし「所得税の青色申告承認申請書」を期限内に出していないと、そもそも青色申告ができません。開業したらすぐに提出してください。詳しくは開業手続きの記事にまとめています。
車を買ったときの扱い
軽バンのような高額なものは、買った年に全額を経費にするのではなく、数年に分けて経費にします。これが減価償却です。
- 新車の軽自動車(貨物)は、法定耐用年数が定められています
- 中古車の場合は、経過年数に応じて短い年数で償却できます
- 青色申告なら、取得価額30万円未満のものは一括で経費にできる特例があります(年間の合計額に上限あり)
中古の軽バンは、この特例や短い償却期間の対象になりやすく、結果として早く経費化できることがあります。車を選ぶときは、価格だけでなくこの点も含めて考えると判断が変わります。
今日からやるべき3つの習慣
確定申告そのものより、日々の記録のほうが大事です。ここができていないと、申告のときに経費を落とせません。
- 1. レシートを全部残す。捨てる判断は後でできます。財布に入れっぱなしにせず、車内に封筒を1つ置いて放り込むだけでも違います。
- 2. 走行距離を記録する。月末の走行距離をメモするだけで、按分の根拠になります。スマホのメモで十分です。
- 3. 事業用の口座とカードを分ける。これがいちばん効きます。仕事の入出金が1か所にまとまるので、記帳が劇的に楽になります。
3つ目は、開業したその日にやっておくと後が全然違います。
よくある質問
確定申告はいつまでにやるのですか?
原則として、翌年の2月16日から3月15日までです(曜日により前後します)。この時期は税務署も相談窓口も混み合うので、1月のうちに書類を揃えておくのが現実的です。
会計ソフトは必要ですか?
青色申告で65万円控除を狙うなら、実質的に必要だと考えてください。手書きで複式簿記を作るのは現実的ではありません。ソフトの利用料も経費になります。
税理士に頼んだほうがいいですか?
売上規模が小さいうちは、会計ソフトでご自身でやっている方が多数派です。ただし、税理士報酬も経費になりますので、時間を配送に使ったほうが稼げると判断するなら頼む価値はあります。
去年の分を申告していません。どうなりますか?
期限後でも申告はできます(期限後申告)。放置するほど不利になりますので、早めに税務署へ相談してください。無申告のままだと、国民健康保険料の算定や各種の証明でも困ることになります。
経費を多く見せれば、税金は減らせますか?
実際に使っていない経費を計上するのは脱税です。そこまでしなくても、本来落とせる経費を漏らさず計上するだけで、多くの方は十分に税金が下がります。やるべきは「盛る」ことではなく「漏らさない」ことです。
まとめ:記録する人が、いちばん残る
軽貨物の手取りを増やす方法は、実は3つしかありません。単価を上げる、経費を減らす、税金を減らす。このうち3つ目は、今日からレシートを残すだけで始められます。
売上を上げるのは相手のあることですが、記録するかどうかは自分で決められます。同じ働き方でも、記録している人のほうが手元に多く残ります。
株式会社オーシャンズは、東京・江東区で18年、軽貨物配送を続けてきました。当社にはガソリン代・車両・保険を会社が負担する案件もあり、そもそも経費が発生しない働き方も選べます。ご自身に合う形を一緒に考えます。
※本記事は記事作成時点の一般的な説明です。控除の要件・特例・期限は改正されることがあります。個別の判断は必ず所轄の税務署または税理士等の専門家にご確認ください。